マークアップエンジニアも幸せ探し(前編)

Webの仕事を始めてから、4年半が経ちます。…って、もうそんなに経ってますか(遠い目)。

「マークアップエンジニア」という肩書きになってから一年半が経ちますけど、それまでの間は、派遣社員で大手制作会社で一年、テレビ局で二年、「Webオペレーター」として働いていました。
「HTMLコーダー」「コーダー」とも呼ばれましたが、契約上はそういう肩書きでした。

「オペレーター」って聞くと、それこそ、コールセンターとかで応対してる人、みたいなイメージがあるので、初めて契約書でその名前を見た時にはビックリしました。
派遣の募集要項には「Webクリエーター」ってあったのに、蓋を開けてみたら「オペレーター」。
そもそも 「Webクリエーター」ってどういう仕事だよ、って気もしますが、当時は「騙された!」とさえ思いました。

だから、「Webオペレーター」よりも「HTMLコーダー」って肩書きの方がよっぽど好きでしたし、今もそうです。だから、「昔はWebオペレーターだったんですよー」なんて言えません。

そんな「Webオペレーター」時代の自分、と、それ以前の自分を、ちょっとだけ紐解いてみたいと思います。

この業界に潜り込んだ経緯

Webに関しては学校で学んだ経験が全くありません。デジハリのパンフレットを読んでは妄想を広げてはいましたが(関係ない)。
大学でサークルのサイトを作っていたくらいで、HTMLのソースはなんとか理解できる程度。DreamWeaverやPhotoShopは仕事を始めるまで殆ど触ったことはありませんでした。
イラレなんか立ち上げた日には、起動画面だけでもの凄い緊張したくらい。

この程度の自分が、デザイナーやプログラマーに簡単になれるとは思っていませんでした。実際、無理です。
就活でいろんな制作会社を回りましたが、全て奇麗に落ちました。運良く最終面接まで行った会社もありましたが、最後に待っていた言葉は全て「君は営業になる気はないのか」でした。
「ないです」と答えた後に何が起きたかは、……ご想像にお任せします。

そんなこともあり、どんな形でもいいから、Web制作の世界に潜り込みたいと思ってました。バイトでも見習いでもいいから、とにかくスタートを切らないと!
そんなこんなで、大学を卒業して、友達はみんな就職して働いている中、自分がある制作会社で働かせてもらえるようになったのは、6月を過ぎてからでした。

Webオペレーターというお仕事

「Webオペレーター」として働いていたころの仕事内容としては、請け負っているサイトの更新作業がメインです。
与えられた素材・原稿を元に、ページを新たに追加し、アップしていく作業です。新たにサイトを一から構築する機会もありましたが、それは稀。時にはバナーを作成したりもしますが、それも文字を打ち変える程度。JavaScriptは他人様のサイトから拝借しては多少カスタマイズできる程度。そんな感じでした。

とにかく指示された作業を素早くミス無くこなすことが求められます。しかも、仕事を始めた当初は、素人そのもの。分からないことだらけです。とにかく指示通りに作業することたけで必死でした。分からないことはすぐに調べる、先輩に聞く、その場その時に解決する。毎日必死でした。仕事内容はとにかく地味でしたけど、今よりも必死でした。毎日覚悟を決めて出社してたくらい。

「言われた作業を言われた通りやる」ということは、逆に言うと、それ以前の工程に口を挟む権限は無い、というかそもそも発言するタイミングがありませんでした。とにかく、次から次へと作業は入ってくるのを片っ端からこなすことで精一杯でしたから。いかに、手持ちの作業を終わらせて終電までに会社をでるか、で頭がいっぱいだったというか何と言うか。

ただ、作業にだいぶ慣れてきてから、いろいろと疑問は感じるようになりました。「このページで、“お問い合せ”と“お問い合わせ”が併存してるけど文言統一した方がいいんじゃないの?」とか、「このサイト、グローバルサイトのはずだけど、Shift_JISで作ってるのはマズくない?」とか。で、結構、その度さりげなく伝えるようになりました。「○○○○のページ作っておきました。あ、あと、ちょっと気が付いたんですけど…」という具合に。

コーディング以前の工程が気になりだしたのはこの頃からです。

未来も喜びもありません

Webオペレーターの仕事を続けていると、「自分はいつまでこの仕事をしているんだろう…」なんて不安にかられます。
毎日似たような作業の繰り返し。何か、今ひとつ、自分の将来が思い描けない感じがありました。
会社の先輩に、酔った勢いで「お前は、いくら頑張ってもDream Weaver以上にはなれないんだよ!」って言われて、ガーン、と思ったこともありました。
酒の席でディレクターに「お前が将来どうしたいのか、俺にはさっぱり分からない」と言われて、 ガーン、と思ったこともありました。
なぜなら、本当にそうだったから。自分は、ただ、ページ量産マシーンに徹してさえすれば、給料もらえるし、評価もされるけど、それ以上の何かがさっぱり見えてこない、そんな状況でした。

かといって、デザイナーになるにも、今すぐなれるほど簡単じゃないです。以前、毎週土曜に、デザインの専門学校に通ってみたりしましたが、半年も経たないうちに挫折しました。週1でマスターできるほど簡単じゃないわと。

ブログを更新するにもネタがありません。昔、こんなことを載せていたくらい。ネタがないことをネタにするくらいしか無かったんです。マジで。

たまには会社での仕事の話でも、とは思うものの、新規で大規模なサイトのコーディングとかが無ければ、大抵は先方から支給されたテキストデータや画像を流し込んで、整形して、加工して、ハイ!出来上がり!みたいな単純作業が中心なので、これといったネタもないのです。(単純作業のジレンマ

何よりも、新規案件が無事納品できた時に、「これでこの作業から解放される…」って安堵感はあるものの、「PV伸びた!」とか「注文増えた!」とか「お客さんに褒められた!」とか聞いても、なんか、いまいちピンとこない、というか別にどうでもいいと思ってしまう自分がいました。それ以前に、そんな話がそもそも聞かされない、なんてこともありますが。

そもそもの目的

Web制作のお仕事において、何らかの作業は、クライアントの何らかの目的を果たすためのものです。ただサイトを立ち上げさえすればいい、なんて、地面を掘ってはまた埋める、みたいな仕事は存在しません。たぶん。そして、案件よって、その目的も、解決する為の手法も異なる訳で、そこを考えるのが難しくも面白くもあるんだと思います。たぶん、このお仕事の醍醐味はここにあるんだと思います。

そんな中、コーダーやオペレーターという立場の人は、作業工程において「末端」に位置しています。
企画・設計・デザイン、といった工程を経てできあがってきた物を、最終的に実際にブラウザで閲覧できるように落とし込んでいきます。
だから、そうであるが故に、「この案件が持つ目的」を知らずとも、作業はできてしまいます。
ただ上の工程からの指示にさえ従っていれば、成果物は一応出来上がりはします。

そのため、案件が終わった時の達成感が、他の肩書きの人々にくらべて、何だか薄く感じてしまいます。
案件の目的を知らない以上、どの案件も、同じような作業に見えてしまっているが故に、「何かを解決した」とか「誰かに喜んでもらえた」とか、そういう感覚からは遠いような気がします。
目の前の作業をとにかく終わらせる、とか、目の前の赤字原稿を減らす、とか、それだけで必死。「目的?何それ?」というのが正直なところ。

でも、「上の作業工程」に不満が無いかと言えば、ウソになるはずです。絶対に何かあるはずです。
ディレクション、スケジューリング、用意された原稿・素材・デザインetc…。作業を対応するなかで、何かしら思うことはあるはずです。絶対。

「末端」にいるからこそ分かること

今となっては余り考えられないことですけど、

  • ディレクトリマップが無い
  • サイトマップも無い
  • 仕様書も無い
  • コーディングルールも無い
  • 文字コードの指定も無い
  • ターゲットブラウザの指定も無い

こんな状態で作業を振られた経験が過去に何度もありまし、

  • 渡された元のHTMLファイルに代替テキストの指定が1つもない
  • 閉じタグがことごとく無い
  • 今時フレームを使ってる

こういうHTMLファイルに遭遇することもよくありましし、

  • いつ作業を振られるのか分からない
  • いつ納品で、何時公開なのかも分からない
  • 案件全体のスケジュールはどうなってるのかも分からない
  • …どころか、「これ、あと1時間で公開だから」といきなり原稿渡される

こんな状態で作業を断続的に振られることもよくありましし、

  • クライアントから「この文字を青くしといて」と言われ、指示通りに青くし、「赤くしといて」と言われて赤くし、…を繰り返した結果、クライアントから「なんか色がバラバラだから統一してくれない?」と言われる
  • クライアントから「ここの文字間を広げて欲しい」と指示されて、文字と文字との間にspacer.gifを挟んで対応するように言われる
  • 「画面の上から○○cm、左から○○cmに画像を配置して欲しい」とクライアントから指示が来て、定規でディスプレイを計ってピクセル数を割り出そうとする

作業以前の問題をはらんだ指示が下りてくることもありました。(※これは実体験です)

作業工程の「末端」に位置しているが故に、こういった「粗」は良く見えてきますし、「こんな状態で仕事振ってくるな!」と思うこともしばしば。それは、コーディング以前の設計・仕様の問題です。
「末端」の工程には、それ以前の工程のしわ寄せが全てやって来ます。すなわち、 「その案件のクオリティ」がどれ程のものになるか分かるのもこの工程だと思います。
ディレクターやプロデューサー、デザイナーには問題と感じられないものが、ここで鮮明になるはずです。

スケジュール的に、これ以前の工程に後戻りすることは大抵の場合難しいと思います。でも、また同じことが繰り返されない為にも、
ここで、何の疑問も感じずに言われた通りに作業をすすめるのではなく、ここで上の工程に物申していく必要があるはずです。
自分は、今でもそうですが、とにかく物申しまくってました。うざがられてるんじゃないかと思う程。
自己防衛、ってこともありましたけど、それよりも、「これが当たり前」とは決して思われたくない、というか「これはマズい」と認識して欲しい、という気持ちがあったからです。
何も言わずにいたら、状況が変わる訳ないですし。

「末端」という響きから、何か弱い立場のようなイメージがありますが、僕は決してそうではないと思いますし、むしろ重要な鍵を握ってると思います。

「CSSレイアウト」というキッカケ

ある時期から話題になり、今となっては珍しくなくなってきた「CSSレイアウト」ではよく「構造と表現の分離」ということが言われます。

「表現」に関する情報は外部のCSSファイルに記述されいきますから、PSDファイルを1つ1つコーディングしていくという、テーブルレイアウトではあたりまえだった手法では効率が悪くなります。かつては、コーディングを複数人で手分けして作業していましたが、単純にPSDファイルを渡すという訳にはいきません。

だから、予めサイト上で使われるあらゆるレイアウトのパターンを割り出して、パーツ化してそれを組み合わせてページを構築できるようにするとか、CSSファイルを使用する部位別などに分割するとか、そういった工夫ができて、はじめて複数人で手分けして作業ができるようになります。

また、「構造」に関しても、どの要素を使うのかとか、id・class名は何にするのか、とか、何かとそのデザインの「意味」が問われます。単にテキストを枠線で囲むだけでも、その枠線は何を意味するのかが求められます。

いずれにしても、以前の通りのワークフローで仕事を進めようとすると、より末端の負担は大きくなります。
何度か、そんな状態で 「CSSレイアウト」の案件をやったことがありますが、……思い出したくもないです(本気で)。
「CSSレイアウト」では、単純に渡されたPSDファイルをコーディングさえすればいいというものではなくなりました。それ以前の設計が重要になったんです。

だから、「CSSレイアウト」が流行り始めた当初、コーダーとかオペレーターとか、末端にいる人達の扱いが変わるんじゃないか、と思ってました。むしろ、言うことは言わないと、ますます自分の首を絞めることになるんじゃないかとさえ思ってました。

「愚痴」の怖い話

仕事の愚痴って何かと出てきます。今でもそうです。で、言うとスッキリします。酒入るとさらにどうでもよくなってきます。自分、酒飲めないですけど。

でも、それで終わりなんですよね。別に状況は変わらない。会社も変わらないし、ワークフローも変わらない。で、また愚痴るという果てなく続くこのストーリー。

じゃあ、自分はどうなのかというと、2年くらい前に、mixiの日記にこういうことを書いてました。

昼休みに職場の愚痴を話すことになっても、「じゃあ、こうすれば面白いよね」って《これからの》話に必ずつなげる。あと、いろいろ問題の多い職場から給料もらってる身だってことを忘れない。他人事みたいに会社や職場の人達を陰で叩かない。

…自分で書いといて、胸の痛みを抑えきれなかったりしますが、それはさておき。

職場や同僚に不満がある一方で、その職場や同僚に守られてる自分、ていうのもいる訳ですよ。そこを棚に上げて、あれが悪い、こいつがむかつく、この会社は駄目だ、みたいな話をするのは本末転倒な気がするんですよ。だから、この時期に、それを止めて、具体的に何をすれば良くなるか考えよう、と。

会社がやらないなら自分でやってしまう

さっき、サイトマップや仕様書が無い状態で仕事が振られる、という話がありましたけど、そういう時は、自分で勝手に用意するようにしてました。頼まれもしないのに。

ディレクトリマップ・サイトマップも作りましたし、仕様書も作りましたし、勝手にスケジュール切ったり、案件のタスクをcheck*padで管理してみたり、あげくの果てには企画書書いてみたり。社内SNSを勝手に開設してみたり。

別にコーディング以外のことは何も期待されてないですし、自分の仕事の範疇ではないはずですけど、無ければ自分で作ってしまえばいいと思って、勝手にやってました。日々、作業の中で不満に思っているものの中で、自分でできてしまいそうなものは、自分で作ってしまおうと。あと、何よりも、上の工程に首を突っ込める面白さがありました。

あと、上に「物申す」時に、説得力を持たせたいために(あと、単純に興味から)SEOやユーザビリティ、アクセシビリティの本を読んだり、セミナー行ったりしてました。

会社が変わりそうも無かったら、自分で変えてしまえばいい、そういう訳です。

こうしていくうちに、仕事の本質的なところ、「自分は何のため・誰のためにこの仕事をしてるのか」ということを意識するようになってきました。
自分の守備範囲を広げることで、その案件の面白さをより感じられるようになったのかもしれないです。

マークアップエンジニア

あれもこれも勝手にやってると、「コーダー」「オペレーター」という言葉に違和感を感じるようになります。
自分はコーディング以外にも興味があって、いろいろ試してみたり勉強してみたりしてるけど、結局「コーダー」「オペレーター」というくくりで見られてしまう。

そこで出会ったのが、「マークアップエンジニア」という名前でした。詳しくは、自分がnowaに載せた、名付け親の森田雄さんの講演メモを読んでもらうとして(necoze nowanowa - [メモ]「マークアップエンジニア・テーブル」(W2C 定例セミナー)その1)、単純にHTML・CSSだけに留まらないものを期待されてるところに惹かれました。むしろ、こういう奴になれたらいいなぁ、とさえ思ったほど。

…という訳で後編に続きます。(※まだ前振りのつもりです)

追記

話が無駄に長くなって、中編に続きます。中編って。

コメント

はじめまして.高1の女子です.
今日コーダーという仕事を知りました ←
HTMLとかとにかく好きでしょうがなくて
この仕事こそ探してたやつなんです.!

だけど現実はなかなか厳しいみたいで...
レポートや、マークアップエンジニアのメモ読ませてもらって
 用語とかいっぱいで難しくて 泣
だけど今 業界の人たちが頑張ってるんだってことは分かりました.

結局うまくまとめれないですけど//
もっとこの仕事について知りたいと思いました.
足しげく通いますんで これからも更新がんばってください◎

| ゆはさ | 2007/08/20 10:50 AM |

>ゆはささん
コメントが遅れて申し訳ないです!
高校生の方からコメントもらえるとは思ってもいなかったので、ビックリしてます…。
実際に働いてみないと分からないことが多い仕事ですけど、
このブログを通じて何か知り得ることがあれば嬉しいです!

>posarecipeさん
…って、すいません…。ここでお詫びです。
コメントスパムを一括削除する際、誤ってposarecipeさんのコメントも削除してしまいました…。申し訳ないです…。マジで以後気を付けます…。

| ネコゼ | 2007/08/27 7:16 AM |

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中の人、ご紹介

制作会社でマークアップ芸人、改め、うっかりIA(自称)をやってます。CSSとかHTMLとかでもご飯食べてます。気が弱くて省スペース設計。でも小言が多い、環境に優しくない32歳です。

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